「グラフィックデザイナーになりたい。本当に独学でもなれるの?独学で学んで就職するまでの実際の手順を知りたい。成功させるコツもあれば知りたいな。」
こういった疑問におこたえします。
独学からの就職は、初めてチャレンジする方にとっては難しそうに思えるかもしれません。一定の期間はかかりますし、デザインを学んだことがない方だとなおさらでしょう。
でも大丈夫です。一つずつこなしていけば難しいことはなく、どなたでも実現可能です。
これを書いている私は独学でグラフィックデザイナー就職し、アートディレクターやクリエイティブディレクター、クリエイティブ系コンサルを経験してきました。
ということで、経験談をふまえて、独学方法から就職するまでの道のりと、就職を成功させるコツまで一通りご紹介していきます。
グラフィックデザイナーの仕事はとても楽しいので、是非実現の一助となれたら嬉しいです。それでは進めていきます。
グラフィックデザインを独学して、デザイナー就職するまでの手順
手順は下記のとおりです。
独学から就職までの手順
- まずは独学する
- 制作物をつくる
- ポートフォリオをつくる
- 企業に応募する
一つずつ解説していきます。
STEP1:まずは独学する
まずは独学しましょう。最初は基礎知識をインプットしていきます。
基礎知識を学ぶ
- DTP基礎
- デザイン基礎
- 色彩学
これらの内容がざっと学べる本を用意して、まずは一通り読みます。簡単なものでいいので、グラフィックデザイナーの仕事がざっくり理解できればOKです。
全体像がなんとなく理解できたら、次は手を動かしていきます。応用段階で必要な知識は以下です。
基本操作を身に着ける
- Illustrator
- Photoshop
実際はほかにもありますが、一番最初はこの2つに絞ればOKです。グラフィックデザイナーが必ず使うアプリケーションで、この2つが操作できれば一通りのデザイン物は制作できます。
テキストを片手に、実際にアプリケーションを操作してみましょう。制作物を作るには、まず基本スキルをマスターする必要があります。
図形の描き方や変形ツールの使い方など、テキストに沿って一通り練習します。マスターできたら、いよいよ実制作です。発展段階で必要な知識は以下です。
実践する
- ジャンル別(ロゴ、パッケージデザイン、装丁など)
制作するものによって、必要な知識が異なります。興味のわくジャンルのテキストを1冊用意し、学びつつ、実際に手を動かして作品を作ってみましょう。
「作ってみたいと思えるもの」から始めればOKです。自分の感性にひっかかるものは楽しく制作できるので、学習意欲UP・経験数UPにつながります。
STEP2:制作物をつくる
STEP1の「実践する」ともしますが、引き続き制作していきます。この段階で大切なのは、「スキルの幅を広げていくこと」です。
徐々に基本スキルが身についてきていると思うので、「興味のわくジャンル」から少しずつ様々な作品にチャレンジしてみましょう。
グラフィックデザインの制作物いろいろ
- ロゴ(CI・VI・BI)
- タイポグラフィ
- インフォグラフィック
- パッケージ
- ポスター・DM
- 雑誌・本の表紙
たとえば上記の通りです。
大切なのは、テキストで学びつつ、実際に手を動かしてみることです。実際に手を動かすことで、スキルが自分のものになっていきます。
徐々に就活を意識して制作する
一通り、色々なものが作れるようになったら、次は志望企業に合わせて作品作りをしていくといいと思います。
志望企業に合わせた作品づくり
- パッケージデザイン会社⇒パッケージデザインを多めにつくる
- ブランディング会社⇒CI・VI、クレドカード、ブランドブックなどを多めにつくる
- 装丁デザイン会社⇒雑誌・本の表紙を多めにつくる
上記の通りです。
選考書類として作品提出をする際は、ここで作ったものの中から選ぶことになります。なので練習しつつ、徐々に就職活動を意識した作品づくりをするのがおすすめです。
効率の良い学習方法は?
結論は、「プロの作品をたくさん模写すること」です。真似する過程でわからないことがあれば、調べて、また手を動かしてみます。
調べては作ってみての繰り返しの中で、スキルが蓄積されていきます。また、色々なデザイナーの作品の模写をすることで、引き出しが増えます。
ただし、模写ばかりにならないように気を付けてください。肝心なのは「就職につながる学習を積むこと」です。
面接に受かりやすくなる学習方法
結論は、「ボランティアで制作すること」です。要するに、デザインを作って欲しいお客さんを見つけて、無償でデザインを制作して納品する経験を積むことです。
なぜこれが大切かというと、企業は応募者の「課題解決力」を重視するからです。企業は、事業を継続・成長させるために、稼げる社員を求めています。「稼げる社員=たくさん仕事を受注する社員」です。課題解決力のあるデザイナーは、クライアントから喜ばれるので、たくさん仕事をいただけます。
課題解決力は以下のような経験で磨かれます。
課題解決力を磨くには
- クライアントの課題をヒアリングする
- クライアントの課題を理解する
- 課題を解決する方法を決める
- 制作物としてアウトプットする
お客さんをとって制作することで、上記のようなスキルが磨けます。
このような経験をたくさん積めば、非常に効率の良い学習となります。面接では、「クライアントのニーズをどのように聞き出し、課題をどのように理解し、作品に落とし込む際は何に気を付けたのか」といったように、そのプロセスを話せばOKです。
STEP3:ポートフォリオをつくる
ポートフォリオは簡単に言うと、作品集のことです。参考例をいくつか掲載します。
【参考】ポートフォリオ例
- coton design:グラフィックデザイナーとして活躍する酒井博子さんのポートフォリオ
- STRAWK:Web・グラフィックを中心としたフリーのデザイン事務所のポートフォリオ
- TAKAYA OHTA:CIを起点としたデザインを得意とするデザイナー兼アートディレクタータカヤ・オオタさんのポートフォリオ
- ポートフォリオ百科:広告制作会社でグラフィックデザイナーとして働く方のポートフォリオに関するインタビュー記事
上記の通りです。
ポートフォリオを提出する目的は、企業に「この人を雇いたい!」と思ってもらうためです。なので、あなたがです。では、採用担当者は選考過程で何をチェックしているのか。
採用担当者がチェックするポイント
- 自社で活躍できるスキルがあるか
- 他の応募者よりも魅力的か
- もし採用したらどこに配置すると良いか
- ミスマッチではないか
上記の通りです。
作品の制作スキル以外にも、さまざまな観点でチェックしています。
選考過程でこれらを伝えきれないと、「うちとはミスマッチだから採用してもすぐ辞めちゃうかも…」などと思われて不採用になってしまうかもしれません。
ということで、ポートフォリオではこれらの疑問にしっかりこたえることが大切です。具体的には以下のポイントです。
ポートフォリオ作成でおさえるべきポイント
- 案件概要(担当範囲や制作期間、目的や制作プロセスなど)を記載する
- 希望企業に合った内容になっている
- 忙しい担当者が短時間で見れるボリューム・分かりやすさ
- 自身の関わり方(こだわりや工夫点、苦労した点や行った対策など)を簡潔に説明する
- 他者との差別化ポイントが伝わる
- 内定した後のビジョンイメージが伝わる
作品や案件概要をただ並べるだけでなく、採用担当者が何を求めているか、相手の立場に立って判断することが大切です。
STEP4:企業に応募する
ある程度作品がたまったら、いよいよ就職活動です。独学でグラフィックデザイナー就職する際の、最低限の基準はこのあたりかなと思います。
企業を選ぶ際の条件
- 未経験OK
- 中小企業
独学なので、もちろん「未経験OK」の条件が必要です。あとは先述の通り、大企業は学歴フィルターがあるので、実力勝負でいける中小企業をねらうのが得策でしょう。
あとは企業によってさまざまな特徴があります。制作会社は比較的多様なスキルが求められたり、広告代理店は企画力を求められるなど。
将来的なビジョンや希望の働き方などから、自分に合った会社を探してみてください。
独学からグラフィックデザイナー就職を成功させるコツ
下記の通りです。
独学からグラフィックデザイナー就職を成功させるコツ
- 会社に通いながらの独学がおすすめ
- 継続できる環境を作ること
- ボランティアで良いから実績を積む
一つずつ、簡単に解説します。
会社に通いながら独学がおすすめ
個人的に、会社に通いつつ独学するのをおすすめします。なぜなら、習得しないうちに退職してしまうと、精神的なストレスで学習に集中できなくなる可能性があるからです。
独学で就職するにはそれなりに期間を要します。その間、「無収入で、いつになったら仕事ができるレベルになるかわからない」という状況が続くと疲弊してしまいます。疲弊すると学習に集中できなくなり、本末転倒です。
なので、できれば会社に通って心を安定させつつ、時間を作ってコツコツ独学するのをおすすめします。体力的には少しきついですが、挫折しにくい方法です。
継続できる環境を作ること
目標を立てたとしても、強制力のない環境ではなかなか継続しにくいものです。なので、継続できる環境づくりがポイントになります。
私の場合は、次の「現場経験を積む」にもつながってくるのですが、身近な人にお願いして無償でデザインを作らせてもらっていました。展覧会とかライブとかコンサートなどのチラシやDMなどのデザインです。
お願いした手前、期限までには必ず作らなければなりません。スキルが追い付かないとか、アイデアが浮かばないなどの言い訳は通用しません。
このようにあえて強制的な環境を作ることで、自然と継続することができます。
現場経験を積む
先述の通り、人にお願いして無償で作らせてもらうことです。これは「クライアントから受注して納品する」という、実際のお仕事と同じ状況です。
無償とはいえ、実際の仕事と同じプロセスを経験することができます。この経験で得た気づきや課題を乗り越えたエピソードなどは、選考において企業へのアピール材料になります。
また、「自分の思うままに作品を作っていた人」よりも、「自分でお客さんをとって納品して現場力を磨いた人」の方が、熱意や本気度が伝わります。
以上が、「独学から就職を成功させるコツ」でした。
ここまで読んで、もしかしたら「本当に独学でもなれるの?学校に行かなくて大丈夫?」と気になっている方もいらっしゃるかもしれません。次の章で解説していきます。
学校は行かなくていいのか?
結論は以下です。
- 大手企業を目指すなら必要。学歴フィルターがあるから
- 中小企業やフリーランスを目指している方なら、不要です
大手企業は、学歴フィルターがあるので学歴が必要です。(公表はされていませんが。)じゃあどの学校が良いのかというと、企業ごとに設定が異なるので特定はできませんが、個人的な経験から言うと、武蔵野美術大学、多摩美術大学、東京藝術大学あたりです。
中小企業やフリーランスを目指している方は、制作実績があればOKです。
なお、上記は「採用選考の観点から見た結論」で、「習得しやすさ」は個人によって異なります。
「習得しやすさ」は、個人による
「独学」「学校」のどちらが習得しやすいか?というと、個人によります。決められたカリキュラムにのっとって進める方が向いている人と、自分のペースで進める方が効率よく学習できる人、など向き不向きがありますよね。参考までにどんな人に向いているかをまとめてみます。
学校に向いている人
- わからないことがあれば、すぐに質問できる環境が欲しい
- 一緒に目指す仲間がいる方がモチベ維持できる
- 学校に通うといった強制力がある方が継続できる
独学に向いている人
- 自分で調べる方が効率が良い
- マイペースに学習した方が、モチベ維持できる
- 学校に通わなくてもわりと継続できる
ちなみに、「大手志望ではないけど、やっぱり学校に行こうかな」と考えている場合はもちろん、美大ではなくデザインスクールで十分です。
ということで、「大手志望なら学歴は必要。効率や継続の観点で必要なら、学校を利用すると良い」という話でした。
最後に:独学からグラフィックデザイナー就職の目安は「1年」
ということで、そろそろ終わりにします。
独学でグラフィックデザイナー就職するには、大体「1年」くらいを目安にしていただくといいと思います。会社員と並行しながら勉強したり、制作物をつくったり、実績を積むと考えると、ざっくりその程度はかかります。
一定の成果を出すための目安として知られている「1,000時間ルール」で考えると、1日8時間みっちり学習と制作に費やせば、大体半年でデザイナーデビュー完了です。
グラフィックデザイナーになった後は、Web制作スキルや動画編集スキルなどを身に着けてマルチなクリエイターになるもよし。あるいはビジネススキルを高めてアートディレクションなど、プロジェクトの指揮管理役として活躍するもよし。多様なキャリアが広がっています。
たった半年から1年頑張っただけで、デザイナーへの道が開けるので、是非チャレンジしてみてくださいね。
この記事は以上になります。 最後までお読みいただきありがとうございました。